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今回は、スレート屋根のリフォーム手法として考案された屋根カバー工法について、自宅の屋根をカバー工法で修理する際に注意すべきいくつかのポイントをご紹介します。
屋根カバー工法は、葺き替え工事と比較した場合、低コストで屋根の状態を回復できる、工期が短いなどと言ったメリットが注目されていて、築20年を経過した住宅の屋根リフォームでは、最も採用されるケースが多いリフォーム手段となっています。
ただ、注意が必要なのは、カバー工法が葺き替え工事と比較して、全ての面で優れているというわけではなく、いくつか注意しなければならないデメリットも存在します。そこでこの記事では、屋根リフォームをカバー工法で進めようと考えている方に向け、カバー工法の基礎知識やメリット・デメリットを分かりやすく解説します。
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それではまず、屋根カバー工法がどのような内容の屋根リフォーム手法なのかを簡単に解説します。どのような建物であっても、定期的な屋根リフォームが必要になるのですが、大きく分けると屋根塗装、カバー工法、葺き替え工事の3つに分類することが可能です。そして、カバー工法は、屋根塗装よりはコストがかかるものの、葺き替え工事よりも低コストに屋根を一新できるというのが特徴の工法です。
屋根カバー工法は、別名で「重ね葺き工事」と呼ばれるのですが、これは今ある屋根をそのままに、上から新しい屋根材を葺いていくという工法だからです。屋根は、日射や風雨など、さまざまな外的要因の影響を常に受けていますので、建物の中でも特に劣化の進行が早いです。そして、老朽化した屋根を放置すると、いずれ雨漏りなどの問題を引き起こし、住宅内部の老朽化を早めてしまう恐れがあるわけです。
屋根カバー工事は、こういった老朽化した屋根について、葺き替え工事のような解体工事を行わず、既存屋根の上に、下地や防水シートなど、屋根づくりに必要な素材からもう一度作り直すことで、新たな屋根を構成する方法となります。葺き替え工事と比較した場合、新しい屋根を重ねて葺くだけですので、撤去工事や廃材の処分などの費用を抑えることができ、工期も短くなるのが特徴です。
なお、カバー工法を採用した屋根は、古い屋根と新しい屋根が二重状態になりますので、通常よりも屋根重量が重くなります。そのため、建物への負担を軽減する目的で、新たな屋根材には軽量な金属屋根素材が採用される事が多いです。
屋根カバー工法は、葺き替え工事と比較すると、工事手順がシンプルになります。以下に、一般的な屋根カバー工事の流れを簡単にご紹介します。
屋根カバー工法は、既存屋根を撤去する必要が無いので、葺き替え工事と比較すると、かなりシンプルな作業手順になります。したがって、短工期、低コストで屋根を一新することができるわけです。
屋根カバー工法は、屋根塗装とは異なり、根本的な屋根修繕が可能なうえ、葺き替え工事よりも低コスト・手軽に実行できる手段として非常に高い人気を誇っています。この情報だけを見ると、確かに、屋根リフォームを検討した時には、屋根カバー工法が最も良さそうに思えるでしょう。
しかし、屋根カバー工法は、どのような施工条件でも優れた屋根リフォーム手法になるかというとそうではなく、住宅によってはカバー工法以外で屋根リフォームを実行したほうが良いケースもあるのです。また、そもそも、屋根カバー工法によるリフォームが実施できない条件もあるなど、いくつかのデメリットが存在します。
ここでは、屋根カバー工法の主なデメリットをご紹介します。
カバー工法は、もともとスレート屋根のリフォーム手法として開発された工法です。スレート屋根は、表面に大きな凹凸が無いことから、既存屋根の上に新しい屋根を組み上げる事が可能です。逆に考えると、屋根表面に大きな凹凸が生じる瓦屋根については、屋根材をそのままに屋根下地を組むことが難しいですし、屋根重量の関係からも、カバー工法による屋根リフォームが実行できないわけです。
なお、瓦屋根だからといって「絶対にカバー工法ができない」というわけではなく、瓦屋根でもカバー工法でリフォームを実行してくれる業者も存在します。しかし、屋根の形状やリフォーム後の屋根重量の事を考えると、瓦屋根の場合は、葺き替え工事によるリフォームがオススメです。
※屋根カバー工法は、既に雨漏りが始まっているなど、既存屋根の劣化が激しい場合も採用できない場合があります。
屋根カバー工法は、既存屋根の上から新しい屋根を作る工法です。つまり、リフォーム後は、屋根が二重になるので、屋根が重たくなるわけです。そして、屋根重量が重くなった場合、建物の重心が高くなりますので、地震による大きな揺れがあった時には、建物被害が大きくなる恐れがあります。つまり、耐震性が屋根カバー工事前よりも悪化する可能性がある点がデメリットと言えます。
日本の住宅は、建築基準法によって建物が備えていなければならない耐震性能が決まっています。そのため、どのような住宅でも、法で定められた耐震性が確保できるように、柱や土台の強度が計算されて建築されています。カバー工法を行った場合、建築当時よりも大幅に屋根重量が重くなるわけですので、耐震基準ギリギリのラインで建てられた住宅の場合は、地震によって倒壊する危険性が高くなってしまいます。
なお、屋根カバー工法によるリフォームを実行したから、確実に耐震基準を満たさなくなるかというと、そうではありません。一般的な住宅の耐震性は、法で定められた基準よりも、かなり余裕を持った耐震性を持っていますので、軽量な金属屋根素材によるカバー工法の場合、そこまで耐震性に問題が生じることは少ないです。一般的に、屋根カバー工法は、非常に軽量なガルバリウム鋼板屋根を採用するのですが、この屋根材であれば、100㎡当たり500kg程度しか重くなりません。つまり、現在、屋根リフォーム業界で主流のガルバリウム鋼板屋根へのカバー工法であれば、そこまで耐震性に影響が出ることはないと考えても構いません。
※屋根重量が重くなるのは確かですので、地震時の揺れの影響は確実に大きくなります。また、旧耐震基準時に建てられた古い家の場合、現状の建物が耐震基準を満たしていない可能性があるので、カバー工法が採用できない可能性があります。
カバー工法のメリットは、撤去工事、廃材の処分が必要ないので、葺き替え工事よりも安くつくという点です。しかし、全ての施工条件でカバー工法の方が安くつくわけではないので注意が必要です。
例えば、既存屋根が瓦屋根で、無理にカバー工法による屋根リフォームを実行するといった場合、施工に手間がかかる分、葺き替え工事よりもコストがかかってしまう恐れがあります。したがって、屋根の大掛かりなリフォームを検討した場合、カバー工法の見積りだけでなく、葺き替え工事の見積りももらって、比較検討するのがオススメです。
ここまでは、カバー工法の注意点ばかりをご紹介していますので、これからカバー工法で屋根リフォームを…と検討していた方は不安になったかもしれません。安心してほしいのは、カバー工法による屋根リフォームは、確かなメリットがあるのも事実です。
ここでは、屋根カバー工法のメリットについても簡単にご紹介します。
屋根カバー工法の最大のメリットは、やはり安価に屋根の状態をリフレッシュできるという点です。上で「カバー工法の方が高くつく場合がある」とご紹介していますが、これはあくまでもイレギュラーな状態で、一般的なスレート屋根のリフォーム手法としては、カバー工法の方が確実に安くつくはずです。
屋根カバー工法は、既存屋根の上に新たな屋根をかぶせる工法です。つまり、リフォーム後の屋根は、2重状態になるわけです。
そして、屋根が2枚設置されるということは、一般的な住宅の屋根と比較すると、断熱性・防音性・防水性など、さまざまな機能面の向上が期待できます。さらに、新たに採用する屋根材について、断熱塗装が施されているものや防音加工などが施されている屋根材を選ぶことで、屋根機能のさらなる向上を期待できます。これは大きなメリットと言えるでしょう。
カバー工法による屋根リフォームは、葺き替え工事と比較すると、既存屋根の解体や撤去が無いので、短工期で完了します。カバー工法の場合、最短で3日ほどで工事が完了するケースもあります。
一般的に、葺き替え工事による屋根リフォームは、7~10日ほどかかりますので、工期は半減することになります。屋根のリフォーム工事を行う時には、家を囲むように足場を組みますので、日常生活がどうしても不便になります。屋根カバー工法は、短い工期で工事が完了するので、住人さんの負担が少なくなる点もメリットになるでしょう。
それでは最後に、これから屋根のリフォームをカバー工法にて実行しようと考えている方のため、リフォーム工事の前に知っておいてほしいポイントをご紹介します。屋根カバー工法は、いくつかの条件がそろった場合、葺き替え工事よりもデメリットが多くなるのは事実ですが、まだ軽度な劣化状態のスレート屋根であれば、デメリットを上回るメリットが得られるはずです。
ただ、屋根カバー工法は、メリットとデメリット面だけを比較検討するのではなく、以下のポイントについてもきちんと考えておきましょう。
屋根カバー工法は、既存屋根の上に新しい屋根をかぶせる工法です。そのため、既存屋根の状態が非常に重要で、激しく損傷・劣化している屋根の場合、カバー工法を実行すると、その後の屋根メンテナンス費が高くなる可能性があるのです。
例えば、既存屋根の防水シートなどが既に破損している状態で、そのままカバー工法を進めると、放置した劣化が原因となり、雨漏りが発生する危険性が高くなります。そして、実際に雨漏りが発生した時には、雨漏り修理のために屋根を2枚はがさなくてはならなくなるのです。さらに、屋根が2重となっていることで、雨漏り原因の特定も非常に困難になり、何度も修理が必要になるなどと言ったケースも多いです。
この他にも、カバー工事後は、古い屋根部分を目視で点検することができなくなるので、将来的なメンテナンスも困難になります。屋根カバー工法は、既存屋根の状態がまだ良好と言える時に行うようにしましょう。カバー工法の方が安価だからと、劣化がそれなりに進行した屋根で実行すると、中長期的に見て葺き替え工事を選んだとき以上のコストがメンテナンスにかかる恐れがあります。
近年では、屋根修理に火災保険が適用できるという話を耳にする機会が多くなっていると思います。これは、火災保険は、住宅火災に対する補償だけでなく、風災や雪災、雷などによる屋根被害も補償対象となっているからです。なお、屋根修理であれば何でもかんでも火災保険が適用できるわけではなく、きちんと適用条件を満たしていなければいけません。悪質な屋根業者の中には、「火災保険を利用すれば屋根修理が無料!」などと営業をかけている業者もありますが、こういった情報を鵜呑みにするのはやめましょう。
そして、屋根カバー工法による屋根修理については、残念ながら火災保険適用外となっています。屋根修理に火災保険が適用できるのは、主に以下の2つのケースです。
カバー工法は、既存屋根はそのままに、新しい屋根材を葺いていく工法ですので、上記の条件を満たしていません。例えば、台風で屋根が破損した…という修理についても、カバー工法は、既存屋根の状態が比較的良好でなければいけないので、リフォーム手段として採用することができません。そして、火災保険は、経年劣化による修理も適用外なので、通常の住宅のメンテナンスとして行う屋根リフォームにも火災保険は適用できません。
こういったことから、カバー工法による屋根リフォームを行う時には、火災保険の適用はできないと考えておきましょう。
今回は、屋根の代表的なリフォーム手法の一つであるカバー工法について、カバー工法がどういった工事手法なのか、またカバー工法によるリフォームを決断する前に知っておきたい注意点などをご紹介しました。
この記事でご紹介したように、カバー工法は、葺き替え工事と比較すると、安価で短工期で工事が可能だという点が大きなメリットと言われています。ただ、カバー工法が、全ての面で優れているのかというとそういうわけではなく、施工条件を選ぶ、耐震性に悪影響が出るなど、いくつか見落とすことができないデメリットもあることは知っておきたいものです。
カバー工法による屋根メンテナンスは、既存屋根の状態をきちんと見極める必要があるので、まずは専門業者にカバー工法によるリフォームが可能な状態かを点検してもらうようにしましょう。